José Luis Cortés
「村上龍 新世界のビート|快楽のキューバ音楽ガイド」(1993年)より
私の大切な友人であり、本人どうしは、兄弟と呼び合っている。ホセ・ルイスには、バンド・リーダー、作詞・作曲家、編曲家、そしてフルーティスト(あと、歌手、ダンサー、バリトン・サックスも吹く)という顔があり、そのどれも超一流だが、フルートの演奏については、間違いなく天才で、世界一で、誰も一かなわない。
彼と付き合っていて、「才能というのは、こういうことを言うんだ」と、何度思ったことだろう。他人にはまったく気を使わない人間なので、キューバでは、「生意気な異務児」と誤解されているが、根はとても優しい。
「恋はいつも未知なもの」というアルバムを、シオマラ・ラウガーの歌でハバナ録音をした時、音楽監督として、完璧な仕事をした。その言葉の真の意味で完璧だった。クラシックを叩きこまれ、ジャズなんかまったく簡単にやってしまう(まるでジャズをせせら笑うように)、まさに音楽の申し子だが、小さい時は漁師になるか音楽家になるか、本当に迷ったのだそうだ。
現在、アフロとヨーロピアンの融合は、つまり「新世界のビート」、クラシックの次にくる新しい音楽は、ホセ・ルイス・コルテスの中にだけ存在する。そのことを言うと、いつも照れて笑うが、自負は持っているようだ。
私は彼の口癖が好きだ。「ふざけんなよ、オレはすごいんだぞ」
1951年、ビージャ・クララ州生まれ。
母親は歌がとてもうまい人だったが、歌手ではなかった。1965年、ENAに入学し、バイオリンを専攻するが、途中からフルートに転向。サックスも学んだ。1970年から1980年までロス・バン・バンに在籍。いかにして聴衆を踊らせるかということを学んだ。ロス・バン・バンでは、ホセ・ルイスの曲も演奏された。続いて、1980年、イラケレから声がかかり、移籍した。毎日数時間は一人で練習に励んだという。彼がイラケレ時代に残したフルートのインプロビゼーションは、特筆に値するものだ。イラケレを八六年に脱退し、八八年、NGラ・バンダを結成。
1951年10月5日、キューバのサンタクララで生れ、2022年4月18日逝去。享年70。彼は「トスコ」と呼ばれました。
愛称の「トスコ」は「ぶっきらぼうな奴」で本当にぶっきらぼうな人だったそうです。
NG ラ バンダは「ティンバ」という音楽スタイルを完成させ、ホセ・ルイス・コルテスはキューバ人たちにとても尊敬されている伝説的ミュージシャンです。
NGラバンダの秀作アルバム「キャバレ・パノラミコ|Échale Limón (1993)」と「La Bruja|魔女」は村上龍氏のプロデュースによって録音されました。「キャバレ・パノラミコ|Échale Limón (1993)」に「ムラカミ マンボ」が収録されています。「ムラカミ マンボ」についてはまた改めて書くつもりです。
ホセ・ルイス・コルテスについては【キャバレ・パノラミコ】【トスコと呼ばれる男】のページにライナーノーツの村上龍さんの紹介の言葉があります。