NG La Banda Live In Japan
エネへ・ラ・バンタ・ライブ・イン・ジャパン
1993年
①君をルンバに連れていく|Los Sitios Enteros
– José Luis Cortés –
②牝ライオンになって、こっちへおいで|Que Venga La Fiera, Camará
-José Luis Cortes-
③チャ、チャ、チャ、コルテス|Cha-cha-cha Cortés
– José Luis Cortés –
④メレンゲ・エスパーニョ|Merengue Españó
– José Luis Cortés-
⑤ボクは楽しんでるのに、何で君が嫉妬するんだい?~サマータイム
¿Por Que Tú Sufres Con Lo Que Yo Gozo? ~ Summertime
– José Luis Cortés –
⑥僕のすべて |All Of Me
– S. Simons- G.Marks –
⑦太陽をかくすことはできないぞ|No Se Puede Tapar El Sol
– José Luis Cortés –
1993年の夏は、約1ヶ月間、NGラ・バンダと共に過ごした。ライブは長崎のハウステンボスと渋谷オン・エアで計9回行なわれた。
このライブ盤は8月11日、オン・エアでの最終日の演奏を収録してある。
8月2日の、ハウステンポス内ユトレヒト・プラザでライブはスタートしたのだが、長崎(佐世保)は私の故だったので、そこでNGラ・バンダの演奏を聞くのは妙な感じがした。
ある意味では、佐世保とキューバは私の中で最も離れている固有名詞だったからである。
佐世保は基地の街で私は大人達がアメリカ軍にペコペコする情景を日常として見て育った。
キューバは、首都ハバナからマイアミ、キーウエストまで100キロという位置関係にありながら大国アメリカに対して今だに民族的な自尊心と自立心を持ち続けている。佐世保は私にとって過去の象徴であり、次作の映画のこともあってキューバは未来の象徴でさえあった。
しかし、ハウステンボスで私はチャンポンや皿うどんや石鯛やあわびや伊勢エビを食べ、その足でユトレヒトプラザへ行って、NGラ・バンダのリハーサルを聞き、その後プールで一泳きしてから、スーツに着替えて会場に戻り、飲んだり食べたり踊ったりするというキャバレーライフを、充分に楽しんだのである。
本場の皿うどんや大村湾で採れた石鯛の刺身を食べた後にNGラ・バンダを見るというぜいたくが存在することをいったい誰が想像できるだろうか?
実はその頃、次作の映画に関してシリアスな危機が訪れていて私の神経は参っていた。
イベントのプロデュースなんかできるだろうかと心配もしていたのだが、皿うどんと石鯛とNGラ・バンダでそのことから少しずつ自由になれた。
NGラ・バンダの圧倒的な演奏が、「前進あるのみ」と私に告げたのである。
その時に、キューバのことを思い、NGラ・パンダ等の美しく強い音楽がなぜ、どのようにして生まれ得たかがわかった気がした。何度も繰り返し書いていることだが、キューバの民衆はただ明るく脳天気に音楽に酔い踊っているわけではない、ということが身にしみてわかった。
平和な日本人には死んでもわからないようなシリアスな状況に彼らはいるのだ。そういう彼らに、日本の演歌やポップスやジャズのような「音楽」とは呼べない、仲間意識をただ強めるだけの感傷べったりのものを聞かせたら絶望のあまり死んでしまうかも知れない。
さてこのライブ盤だが、初のマルチ録音ということもあって、NGラ・バンダは、正確極まる、信じられないドライブ感を披露している。「君をルンバに連れていく」に始まり、「太陽をかくすことはできないぞ」に至る全7曲は、私とリーダーのホセ・ルイス・コルテスが選んだものであり、コンサートに来た人はもちろんのこと、今だにNGラ・バンダのライブを聞いたことがないという可哀想な人にも、そのアンサンブルとピートのすごさをわかって貰えるものになったと自負している。
ボリュームを大き目にして、聞いて、キューバ人のようにポジティブに、そしてエレガントに踊ってみて下さい。
アタッカ、チーチョ!
村上龍
ホセ・ルイス・コルテス(ボーカル/フルート)
トニー・カラ(ボーカル)
マリアノ・エンリケ・メナ(ボーカル)
ホセ・ミゲル・クレゴ(トランペット)
エルピディオ・チャポッティン(トランペット)
ラファエル・ミケル・ヘンケス(テナーサックス)
ロランド・ペレス・ペレス(アルトサックス)
ミゲル・アンヘル・デ・アルマス(キーポード)
ロドルフォ・アルグディン(ピアノ)
フェリシアノ・アランゴ(ペース)
カリクスト・オビエド(ドラム/コーラス)
ウンベルト・ソサ・アコスタ(トゥンバ)
パブロ・コルテス(ポンコ)
キジェルモ・アモーレス(グイロ)
Produced by: Ryu Murakami
Sound Produced by: José Luis Cortes
Recorded & Mixed: Ramón Alom Suarez, Tsuneo Matsumoto (Music In), Sinpachirou Kawade (Music In)
Mastering Engineer: Machiko Suzue (Sony Records)
Art Direction & Design: Tomoaki Sakai (Blancchic)
Illustration: Hisashi Nishikata
Photographer: Atsushi Kondou
Translator: Harumi Tsukasaki, Patricia Medina
Production Service: Makiko Nosaka(Sony Records)
Supervisor: Ikuo Nabeta, Tamio Suzuki (Sony Records)
Special Thanks to Genichi Yamamoto (Shueisha), Takurou Kawanabe (Music in), Motomitsu Tada(TFM), Haruhiko Kouno, Sadayuki Kurawaka (SMASH), Yukiko Yoshino, Sásha
Recorded at On Air, Shibuya Tokyo
1993.8.11